2024年12月
『科学するブッダ』佐々木閑
著者は仏教学者であるにも関わらず、科学にも専門家以上に造詣が深く、本書では「物理学」「進化論」「数学」「仏教」の歴史を詳細に記述している。西欧や西アジアで信じられている宗教は絶対である神の存在が考察の原点にあり、「物理学」「進化論」「数学」もかつてはそうであって、今でも同じかもしれない。また「仏教」には本来は絶対神がなく人間の瞑想の中から生まれた宗教であるようだ。ただこれら全ては人間が進化をし余裕が出来てきた脳の中でしか発展しえなかった学問であり思想である。著者はそれを人間化と呼び人間が考察を続けることで益々人間に身近なものになっていくのだろうと思います。親鸞の「空」とエントロピー増大の法則が繋がっているような気がするのは私だけでしょうか。
2024年11月
『目的への抵抗』國分功一郎
コロナ禍で行政府から出された「不要不急」が当たり前のように皆が何の疑いもなく受け入れてしまったことへの警鐘から始まっています。ウィルスが蔓延していた当時は当たり前で、受け入れるのは当然としても、本当は立法府を経ずに出された警戒警報に若干の違和感を持ってもいいのではないかと問い掛けられています。
「目的」があればその方向に向かう行動があります。その行動にはわざわざ遠回りをし色んな楽しい経験を積みながら「目的」に近付いて行くと言う本書にもあるようなまさに人間らしい進め方と、「目的」だけを見据え一心不乱にわき目を振らず手段を選ばない進め方が有ろうかと思います。ただ、後者は世界各所で起こっている戦争にまで発展しかねない恐れがうかがわれるような気がします。いずれにしても、先月同様私にとっては難解な書籍ではありますが、この書籍から始まった思いが哲学と言えるのだろうと思います。
2024年10月
『暇と退屈の倫理学』國分功一郎
本の題名を見てすぐに思いつくのは「暇」は外部要因、「退屈」は内部要因位でした。人類が発生し大移動をし、世界中に広まっていった頃までは仲間と共同し食料を調達し平等に分け、毎日がその繰り返しで「暇」と言える状況にはなかったはずです。8月に紹介したゴリラのコミュニティーと同じでした。やがて人類の拡散が収束し定住し毎日食料を探し求めることから解放されると、食料を備蓄するコミュニティーが出来て備蓄の量によってヒエラルキーが発生し上位の者から「暇」と言える時間が増えていき、芸術や科学や哲学が発生した。人間は住み慣れた時間と空間に居続けることが出来ず常に新たな世界へと足を踏み入れなければならないDNAを持っている様です。人間が人間らしく暮らすとは何か?私にとってはかなり難解な書籍ですが、何度も読み返すたびにより深いところへと誘ってくれる1冊です。
2024年9月
『宗教を学べば経営がわかる』入山章栄、池上彰
経営理念やミッションを社長が聞かせることで社員が腹落ちしベクトルを一点に合わせ進んでいく。宗教においては教祖が神の教えを説いて民衆が共感し、神の教えが彼らの人生を導いていく。まさに経営の組織は宗教で形づけられる組織と似ていると言ってもいいでしょう。むしろ会社の組織はそうあるべきで、日本においても世界においても創業者の思いに共感した社員が会社を名だたる企業に盛り上げていった。まさに宗教が世界中に広まっていったエンジンと同じではないでしょうか。
2024年8月
『森の声、ゴリラの目』山極寿一
ゴリラの研究者である著者がその生態を観察し、人類の現在の物質世界への警鐘を鳴らしていることが表題からも推察されます。
アフリカのジャングルでゴリラと共に生活をし調査をする中でゴリラの社会性が人類のものとは全く違い、他者を攻撃することはなく、仲間を思いやり、強いものが弱いものを守るコミュニティーを作っているのを目の当たりにし、かつてゴリラよりも弱者であったであろう人類が彼らの好奇心を満たすためにジャングルから捕食者に目立つサバンナにあえて進出したのは、この社会性が彼らを支えていたと説いています。
ところが人類はやがて二本足で立ち、脳を成長させ、道具を使い、言葉を獲得し、文化、文明を形成し、農業革命、産業革命を経て、森や他の種を侵略してきてしまいました。
このままでいいのか、ゴリラたちの生活の中に人間本来の生き方の本質があるのではないか。再度私たちの周りに起こっている当たり前のことを疑ってもいいのではないでしょうか。世界の潮流となっているSDGsもその一つであろうとは思いますが、地球の未来の為と言うのはいかにも横柄な言い方で、地球に生きる命あるものの為であることを改めて認識する必要があると思います。
2024年7月
『デザイン思考が世界を変える』ティム・ブラウン
「デザインをする」と「デザイン思考をする」の違いを事例を交えて丁寧に解説してくれています。デザイン思考は仮説→検証→実施を進めながら答えを見出していくリサーチデザインによく似ています。我社もブレストを行って新商品の選定をし、実際に販売できるものを作ってからマーケティングに取り組んでいました。
どうりで売れないわけです、全く手順が間違っていることに気づかされました。新商品案の市場を丹念に調べ→ストーリーを作り→再度ブレストを行い→プロトタイプを作り→顧客に試して頂き→意見を反映し→新しいソリューションを提供していく、時間はかかるが確実な「デザイン思考」で緻密な取り組みを行った上で、経済の持続性と地球健康の持続性にも配慮しながら、誰もが享受できるものを作り出していくことが我が発泡イノベーション企業の務めだと痛感しました。
2024年6月(4)
『真理の探究』佐々木閑、大栗博司
自然界を物理法則から探求する大栗先生、仏教を人間の内面から探求する佐々木先生。いずれも仮説を立て、実証しまたそこから新たに発生する疑問に対し仮説を立て実証するという方法で、真理とは何かに魅せられ探求している方達の様です。経営においても同じような手法に「リサーチデザイン」があります。これも仮説を立て、実証し、差異を抽出し戦略に生かしていく方法です。
大栗先生の記述から、宇宙の法則と量子の法則が近い物であるあるいは同じ物であることが理解出来ました。
また副題が「人生に生きる意味はない」と強烈ですが、佐々木先生の記述から、絶対の神を信仰する一神教では神が生きる意味を与えてくれものとされているのとは違い、仏教では煩悩(生きる苦しみ)から逃れるのは自分自身しかない、自分の心の中にこそ生きる意味があるのだと教えられました。
2024年6月(3)
『裁判長の泣けちゃうお説教』長嶺超輝
最近「イチケイノカラス」と言うTVドラマで、裁判官が段上から降りてきて判決以外のお話を被告人に直接語りかける場面がありました。そんなことはありえないことでドラマの中だけの物語と思っていました。裁判官と言えば検察官と弁護人の陳述をただ法や判例に基づいて淡々と判決を述べる無機質なイメージがありました、法のもとに判決を言い渡すのは当たり前ですが、人間としての情も判決に影響させてしまう裁判官がいるんだと本書を読んで何かほっとし、人間の温かみを感じました。裁判官も人間です。法のみで裁くにはジレンマを抱えている方も多くいるだろうなと思います。そんなジレンマを超えた何人もの裁判官のお話がたくさん載っていて、こんな裁判官に裁かれたらきっと再犯などなくなるだろうと思います。
2024年6月(2)
『職場を腐らせる人達』片田珠美
職場において自己保身や承認欲求に突き動かされ職場にいやな空気を起こしてしまう。本書では様々な事例をあげていますが、組織が大きくなるにつれそのような人が増えて来るような気がします。幸いわが社ではありえない話ばかりでしたが、読み進める中で自分がその張本人ではないか、あるいはなりはしないだろうかと思いつつ読んでいました。意見が対立したときに、自分の正当性を主張したいばかりに、本来会社にとって何が正しいのかを見失ってしまうことはないでしょうか。これも会社を腐らせるまでとはいかないまでも、気を付けなければいけませんね。
特に役職が付いた方には起こりそうです。部下の意見もしっかりと聴いて自分よりも会社にとって良い意見であれば認めようではありませんか。
本書はリーダーとなった方達に、自らの行動と照らし合わせて読んでみて頂きたいと思います。
2024年6月
『会社の老化は止められない』細谷功
組織が少し大きくなると、ルールや仕組みや規則を作っていかないと統制が取れなくなってきます。我社も慣例で済んできたことなどが新人が増えるにつれ慣例であった事を仕組みに落とさなければ見落としや不具合が目立つようになってきました。ただ、ルールや仕組みは目的を果たすための手段のはずか、いつの間にか目的になってしまっていることがあります。壮大であった目的が、すぐ目の前の事を片付ける手段を目的になってしまっていても誰も気が付かない。組織が大きくなるにつれてその傾向が大きくなるようです。そこには「事」を変革するようなイノベーションは生まれてきません。年を取ると物事を円満に済ませようと画策し周りに波風を立てないようにする傾向があるように思います。それはそれで年の功で必要なことかもしれませんが、会社においてはその後の発展は望めないのではないでしょうか。
2024年5月(2)
『共感型リーダー』岩田松雄
会社(組織)のリーダーは明確なミッションやビジョンを掲げ、社員(構成員)に腹落ちするまで何度も熱く語りかければ、ルールやマニュアルはかえって足かせになることもあるのだと思いました。これまで少しでも不具合が発生するとルールやマニュアルを作り皆で守りましょうと言ってきました。それはそれで必要なことかもしれませんが、その前にもっとすべきことがあることを思い知らされました。
各人が同じミッションの元で行動することが出来れば、ミッションに沿った行動を起こし、組織をミッションに導き、社会に貢献できるのだと、スターバックスコーヒーやリッツカールトンやJ&Jの心に響く事例を交えた著者の言葉から伝わってきました。
また、パートナー(スターバックスでは働く仲間をそう呼んでいます)に接する際のリーダーの心構えや、接し方まで細かく教えてくれていて、実に参考になります。本書は何度も読み返し実践に導いてくれるメンター本となることは間違いありません。
2024年5月
『指導者の条件』松下幸之助
まず最初に感じたのは、歴史に登場する指導者の書物を何度も何度も読み解き、直面する経営課題に立ち向かってきたことがひしひしと伝わってきました。経営の神様と呼ばれる著者も歴史の中に師と仰ぐ人達を追い求めてきたのだと思います。指導者はいつの時代もその都度その時の正解と思われる判断をしなければなりません。その際には必ず迷いが生じ悩み、先人の行動や思想の中に自分なりの正解を探し求めています。経営の神様もそうであったことに少し気持ちが和らいでくるのは私だけでしょうか。
2024年4月(2)
『ストーリーブランディング100の法則』川上徹也
モノづくりの現場では出来上がるまでに作る人の思いや、苦労した経験があってはじめて商品をお客様に届けることが出来ています。ただその商品が出来上がるまでの経緯の中に様々なストーリーがあることをもっと知って頂ければ、共感したお客様に選んでいただく契機となるのだと知らされました。
商品はデザインや機能、お値打ち感などで選んで頂いているのだと思いますが、作り手のストーリーにも共感して選んで頂けるのであれば作り手冥利に尽きます。またお客様が選んだ商品でその後のストーリーを描いて頂けるなら商品の生涯を彩ることになるのではないでしょうか。
2024年4月
『心を豊かにする菜根譚33語』多川俊映
「菜根譚」およそ400年前の中国明の時代の最後に時代に洪自誠が記した随筆です。357語に中から興福寺貫首多川俊映氏が33語を選び、自らの経験や思い、仏教の教えを交え我々にも分かり易く共感できる内容になっています。
本書は、自然界の中に身を置く私たちが自然に抗うことなく自然体で、足るを知り、自分自身の責任において自分の人生を生きるべきと問いかけています。また、人間の物欲世界や、科学技術の進む方向、SDGsに象徴される環境問題の進む方向に関しても警鐘を鳴らしています。400年間様々な歴史上の人物が座右の銘として愛読し繋がってきた本書は、今日まさに改めて見直さなければならないと感じました。
2024年3月
『自省録』マルクス・アウレリウス(佐藤けんいち編訳)
1800年前の第16代ローマ皇帝マルクス・アウレリウスは最後の五賢帝とされています。内政では善政を行い、周辺国との戦いの中、忙殺される日々の就寝前に瞑想し自省した記録です。いわば反省日記でしょうか。本書には180の言葉が紹介されていますが、トップとしての悩む心や迷う心をどう整えていったかを読み取る事が出来ます。宗教の開祖の教えにも心に響くものがありますが、本書の言葉は特に企業人にとって共感できる部分が多いのではないでしょうか。企業運営の中で常に息詰まりながらも自らを高めようと考えているマネージャー、管理者には是非読んで頂きたい一冊です。
2024年2月
『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか』岩尾俊兵
日本企業発祥のカイゼンを始めとする様々な日本式経営手法がアメリカに渡りコンセプト化され日本企業がそれを逆輸入しようとしていることに警鐘を鳴らしています。
我社でも提案制度や改善活動を進めていますが、その活動を暗黙知として引き継いでいくことはしても、体系化(コンセプト化・パッケージ化)までして将来の会社の為に全社員に共有しようとは考えていませんでした。それが必要かどうかは今後の課題として、工場現場の経営手法を見直すきっかけになった1冊です。
2024年1月
『孫社長にたたきこまれた「数値化」仕事術』三木雄信
事業の方向を判断したり、設備投資等の案件を決める際には必ず数字で判断しなければなりません。まずは全ての事象を数字で拾い集めることから始めるのですが、集めるだけで終わってしまうことが多いのではないでしょうか。集めた数字は様々に解析し経営判断できるような形にしてこそ「数値化」したと言え、正しい判断材料となります。もちろん経営判断にはカンも含まれますが、「数値化」された資料を丹念に読み解くことでカンも鍛えられ冴えてくるのではないでしょうか。本書では集めた数字を経営判断の材料に昇華する為の具体的な手法が数多く示されています。
2023年12月
『空海のことば』保坂隆
一般には弘法大使として知られている空海ですが、全国行脚した際に各地で起こした奇跡が伝承残されています。わが町豊川でも飢饉の際に杖を突いて水を出したといわれる井戸が大切に祭られています。世の民衆に最も親しまれた僧侶です。
若くして才を見出され唐に渡り、命がけで仏教の教えを伝えようとしたモチベーションはどこから生まれてきたのでしょうか。本書は空海のことばを著者がかみ砕き、自らの思いも交え分かり易く伝えてくれています。読み進むうちに今の自分にまさに共鳴できるぴったりの言葉が各所に出て来るはずです。
2023年11月
『とにかく仕組み化』安藤広大
「仕組み化」と聞くと、なんでもマニュアルを作りそれに従って作業を進めるように思えるが、そうではありません。会社の運営についても、自由奔放に出来るものではなくて、仕組みあるいはルールの中で運営されています。会社の場合、「仕組み化」するのはマネージャーの仕事で、ある程度の枠組み(しくみ)を作っておけば、社員はその中で自由に行動でき、心理的安全性も担保されます。また、しくみがあればその中で自由なコミュニケーションが交わされ、人的トラブルが起きにくく、起こっても早い解決が望まれます。トップマネージャーが常に頭の中に入れておかなければならないタスクです。
2023年10月
『伝える力』池上彰
相手に自分の考えや思いを「伝える」とは「伝わる」ことを前提としています。「伝える」にはそれなりの技術が必要であり、本書では細かく具体的に示されています。一方「伝わる」とは相手を尊重して対峙し、共鳴して初めて成立するものであり、本書は「伝わる」には何が大切かを問いかけています。大切なのは二つ、まず第一には相手の話をよく聴き、先にこちらが相手を理解し共感することであり、第二には素直な心であらゆる事から学ぶ姿勢を持ち続けることが大切であると述べています。コミュニケーションでお悩みの方、ぜひ一読願いたいです。
2023年9月
『ドラッガーの実践経営哲学』望月護
ドラッガーの著書は膨大で難解で、何度も読み返し実践をしつつ理解を深めていくものと理解しています。本社はドラッガーの含みのある言葉を著者が厳選し、言葉一つ一つに具体例や、著者の経験や知識を織り交ぜて解説してくれており、初めてドラッガーに触れる方でも腑に落とすことが出来ます。もっと興味がわけば、巻末の参考図書でさらに学ぶことが出来ます。それにしても1900年代、ドラッガーと同じ時代に活躍し少なからずドラッガーの影響を受けたであろう経営者は偉大な方が多いですね。
2023年8月
『運をつかむ』永守重信
同じ出来事でも運が良かったと捉えられる人もいれば、何事もなかった様に過ごしてしまう人もいる。「運がいい」とはその僅かな差ではないでしょうか?
小さな努力をひたすら絶え間なく続けることで磨いた感性で目の前を通り過ぎるほんの些細なことに気に付け、それを肯定的に捉えられる人こそ運を掴むことが出来るのではないでしょうか?
日々、絶え間なく努力し、物事を前向きに考えることを心掛けたいと思わせてくれる一冊です。
2023年7月
『ゼロからの「資本論」』斉藤幸平
資本論は生涯で1回は読んでおくべき書籍と言われていますが、難解さとボリュームでなかなか取り組めません。本書はマルクスの思いをわかりやすく紐解いてくれています。SDGsや脱炭素、地球環境の改善など資本主義の限界が来ているように思えます。なんでも貨幣と交換しようとする商品化への警鐘が説かれています。本当の「富」とは何か?わが社のミッションである「心豊かな暮らし;for the good life」ではないかと改めて思わせて頂きました。
2023年6月
『「任せ方」の教科書』出口治明
仕事を任せるにはその人に合った役割をきちっと決め、権限を与え責任を取らせることが条件です。責任を取るとはベストを尽くすことだと言っています。また、任せる方は内容を相手の腑に落ちるまで説明し、納得してもらうことが欠かせません。仕事を任せることに悩んでいる方、ぜひ一読を。
2023年5月
『売る力』鈴木敏文
売り手にとって最も気を付けなければならい姿勢は「お客様のために」ではなく「お客さの立場に立つ」ことであると一貫して述べています。ついついお客様の為と言って売り手の都合を押しつけていないか警鐘を鳴らしています。またお客様が買わないのは思いを充分伝えていない我々の姿勢に問題があるとも述べています。お客様になりきることがいかに大切が気づかせてくれる一冊です。
2023年4月
『心を高める、経営を伸ばす』稲盛和夫
20年前の2004年に発刊された京セラフィロソフィーのバイブルです。
正しい仕事をし、会社を正しく導くために、正しい心を養うことの大切さを様々な状況や立場から説かれています。
まさにその思いが新刊の「経営12カ条」にもつながっていて、会社を経営するとは何か?会社は何を目指すのか?
迷った時に何度も読みかえす一冊です。
2023年2月
『日本の伸びしろ』出口治明
今、日本は経済も政治も科学技術も先進国にあるまじき窮地に陥ってしまったとのニュースが毎日のように流れている。日本人の同調性も相まって、皆が悲観的な見方をするようになってしまっているのではないか。しかしながら真実を見抜く力を養い、少し違った視点で事象をとらえ、新たな行動を起こせば、まだ打つ手は十分あることを出口氏は訴えている。その方法をデータを駆使しながら、様々な分野に渡って解説している。読み進むうちに勇気が湧いてくる一冊である。
2023年1月
『世界史の針が巻きもどるとき』マルクス・ガブリエル
本書の冒頭で、ヨーロッパが地球の覇者として成功していた19世紀に歴史が戻ってきていると主張しています。科学技術が発展し、インターネットが世界の構造のみならず人の心の内部まで支配しつつある現実に警鐘を鳴らしています。
科学技術はあくまで日常の営みの道具にすぎません。時代は本来の人間同士の倫理観に満ちた営みを取り戻さなければならない局面に来ているのではないでしょうか?
会社経営もSDGs経営や健康経営を進んで取り入れていかなければ時代に取り残されてしまうでしょう。わが社は for the good life (心豊かな暮らしのために)を掲げ、世の中の人々が不安のない心が穏やかで豊かになるためにできることは何かを考えながら進んでいきたいと思います。
2022年12月
『フィードバック入門』中原淳
最近の調査で新入社員に望む一番の資質は「コミュニケーション力」とのことです。
ただ、どれほどの会社が正しくコミュニケーションを取っているでしょうか?
年に何回かの面談をする際にも、相手にとって耳の痛いことを言わなければならないことがほとんどです。相手も様々な対応をしてきます。そんな時、どう対応をすべきか、
「フィードバック」という形で細かく掲載されています。部下とのコミュニケーションにお悩みの方、一見の価値ありです。
2022年11月
『売れる『伝え方』のぜんぶです』日野眞明
自己紹介でこちらの内容がどれほど伝わっているでしょうか?
ましてや自社や自社商品のプレゼンでどれほどわが社が伝わっているでしょうか?伝え方次第ではほとんど相手に響いていません。
そんな悩みを解消してくれるのが本書です。2,3時間で読めてしまうのに、根底には大変たくさんのマーケティング理論が潜んでいます。さらに筆者が30年間で10000社の会社のコンサルをした経験がエッセンスとして詰め込まれています。
人脈を広げたい方、新たな顧客開拓をしている方にお勧めの1冊です。
2022年11月
『「価格上昇」時代のマーケティング』小坂裕司
昨年より原料、燃料、電力の価格が日を追うごとに上昇し、会社の経営にボディーブローのように効いてきています。世の中の状況に応じた価格転嫁さえもなかなか難しい中、自社の商品に自信があれば価格転嫁も恐れるなかれ、今こそお客様の選別をすべき時期と背中を押してくれています。価格の改正のお願いをするとお客様が逃げてしまうと思っている中小企業の経営者の皆様、自信をもって現状を訴えましょう。本当のお客様ならきっとわかって下さることでしょう。
2022年10月
『売れる『伝え方』のぜんぶです』日野眞明
自己紹介の重要性を論理的に紐解きながら、相手の立場に立っていかに相手に「伝わる」かが事例を交えわかりやすく書かれています。短時間で読んでしまいましたが、根底には古今東西の多くのマーケティング理論が流れているのを感じたのは私だけでしょうか?難しさを感じさせることなく学ぶことができ、自己紹介から導入しますが、B2Bにも十分使えるような内容です。ビジネスマンの皆さん、多くのマーケティング理論を学ばずともこの一冊で十分です。
2022年9月
『壊れ窓理論の経営学』マイケル・レヴィン
犯罪学から導かれた「壊れ窓理論」ですが会社の5S,改善に通ずるものがあります。ちょっとしたほころびを見て見ぬふりをしてしまうとそれが当たり前になってしまう。そして次々起こりうるほころびを見逃し経営破綻に陥るとあります。わが社では毎月5活動、改善活動の発表会をし、ちょっとした変化を共有し「壊れ窓」に気が付く感性を養う訓練をしています。
また、社員育成にも同じことが言えます。社員のちょっとした変化を顕在化させ、皆で課題解決できる、そんな会社になれるといいですね。
2022年8月
『最強のリーダー力』新将命
日本最強経営者の1人、新将命(あたらしまさみ)さんの書籍はどれを読んでもいまだに多くの気づきがあったり、身につまされることがあります。35年前に初めて読んだ時と全く変わらない新鮮さを感じさせてくれます。私のブックメンターです。
2022年7月
『放っておく力』枡野俊明
身につまされる内容が多く一気に読んでしまいました。また、99の章に分かれていてどこから読んでも入りやすい内容です。各章に仏教の教えから導かれた金言が語られており「人の悩みは全て人間関係にある。(アルフレッド・アドラー)」を癒してくれるかもしれません。
2022年6月
『心理的安全性の作り方』石井遼介
心理的安全性は、上役や周りに忖度することなく誰もが自由に自分の意見を述べ、自由に行動を起こせる雰囲気を醸し出す土壌を作り上げることが出来る。社員一人一人が自分の考えを述べ、仲間と協議し、結果を共有して、会社を高めていけたら、我社のミッションである『For The Good Life』に繋がっていけると思わせてくれる一冊である。
2022年5月
『2030年を生き抜く会社のSDGs』次原悦子
今ではSDGsは欠かすことの出来ない経営課題です。
世の中、ISOと同じくSDGsの為のSDGsの取組となってしまっていないでしょうか?
自社の経営ビジョンをしっかり見据え、まずできることから活動をすべきと本書から問われています。
2022年4月
『大河の一滴』五木寛之
誰もが一度は思い悩む生死感や自分の存在意義を紐解いてくれています。
宇宙の誕生から綿々と流れる大河の中で人間に生まれた自分という一滴の存在価値に思いをはせることが出来ました。
肩肘張らずに自然に気持ちを豊かに持って生きることを改めて教えられました。
2022年3月
『トヨタに学ぶカイゼンのヒント71』野地秩嘉
以前、社員全員でトヨタの田原工場を見学させて頂いたことがあります。
我社のような中小企業には参考になることは無いと思っていましたがトヨタの黎明期からのカイゼンが各所に残っていてわが社でも参考にさせて頂きたいことが多くあったことを覚えています。
本書まさにその記憶をよみがえらせてくれました。
製造業であってもなくても全ての業種に共通する気付きを与えてくれます。
2022年2月
『まかせる力』新将命, 髙田明
ジャパネットタカタは事業承継に成功した企業としてよく事例に引き合いに出されます。
社内であったであろう様々なコンフリクトを乗り越え一切を任せきった高田紙の潔さは見習いたいと思います。
2022年1月
『会社がなくなる』丹羽宇一郎
今後の世の中の動きを独自の感性で読み解きこれからは中小企業の時代と説いている。
またイノベーションには古来から不変の姿勢があるようである。